「あ、でも、このお話は、今日はしないでおきます」
ガイドさんの一言に、
バスの運転手さんの口から、くすっと笑い声が漏れました。
長野県上田市にある長谷寺から周遊バスに乗ると、
真田家の家紋・六文銭が背中に入った陣羽織のような
衣装を身についた女性のガイドさんがマイクを握っていました。
周遊バスは、観光案内と地域の直売所である「ゆきむら夢工房」、
「真田氏歴史館」、「真田氏本城跡」、「長谷寺」、
「山家神社」、「黒門前駐車場」、
「ふれあい真田館前」、「真田中学校」を巡回しています。
観光の方は1日フリー乗車券で乗ると便利ですし、
私のように行き先が決まっている人は、1乗車100円で利用できます。
ガイドさんは、私の母より少し下の世代のようでしたが、
「おはようございます!」と、元気いっぱいの挨拶。
長谷寺から乗車したのは私一人だったのですが、
停留所から停留所までの間、どの寺社に何が収蔵されているか、
真田家にゆかりの人物がどのような運命を辿ったか、
窓から見える山や城跡について、次から次へと解説していきます。
とても丁寧に説明してくださるので、
私も耳を傾けながら、
「それは、初めて知りました!」
「へぇ、そうなんですね~」などと相槌を打っていきました。
その途中で飛び出したのが、冒頭の一言。
話そうとしていたことを辞めて、
「あ、この話は、今日はしないでおきます」というものです。
ガイドさんは、自分の頭の引き出しに入っている知識の中から、
私が興味を持ちそうな話題を選んでくださっていたようです。
ところが、「これを、話そう」と思いついたものが、
私が下車するまでに話しきれないものだったか、
もっと優先順位の高い話題が見つかったのか、
瞬時に、「今日は、話さないでおこう」と判断されました。
「私は、こういうことを説明するのが好きなので、
いろいろお話してしまうんですけど。
とても、たくさんお話することがあるので。
また、ぜひ、いらしてください。
今日、お話しなかったことは、次の機会に…」と、
ガイドさんは付け加えました。
運転手さんまで、くすっと笑ってしまう出来事だったのですが、
とても温かく、楽しい気持ちになりました。
ガイドさんは、上田・真田LOVE
上田・真田の名所旧跡や、真田家に縁の人物や、歴史が
とても好きなのだと思います。
ただし、自分の知識をひけらかす雰囲気ではなく、
乗客の反応を見ながら、
その上田・真田LOVEをシェアしようとされている気がしました。
また、次の機会に、
あのガイドさんと出会えたら嬉しいです。
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